料理人の矜持 その10

アーティチョーク料理

前回の投稿から1年以上経過してしまいました。
その間に2022年12月末でテーラーメイドレストラン「PANDA couture」を、2023年3月末で「cafe 甘ぱんだ」を終了し、2023年4月から陶芸に集中する日々を送り早や5か月が経ちました。

そして1つ前の投稿を「集大成」と題し瀬戸に来てからやってきたことを1つの料理として完結させたことを紹介しました。

特産物として育てたいと思っていたark.farmのアーティチョークの葉と茎を約1年乾燥させてそこから灰を作り、長石や他の灰と調合して釉薬にしました。
瀬戸の特徴でもある白土で作った器の内側にその釉薬を掛け、外側はアーティチョークの葉を模した彫りを入れて織部釉を掛けて焼いています。

アーティチョークの蕾は軽く蒸した後に固いがくを外し、柔らかい部分を丸ごと香味野菜、白ワイン、鶏の出汁、塩漬けにしたイベリコ豚のカベセロと呼ばれる肩ロースと一緒に煮込みます。

これは「アーティチョークのバリグール風」と呼ばれるフランスのプロヴァンス地方の郷土料理に近いもので本来はこのスープをそのまま提供するのですが、こちらではまず肉とアーティチョークを取り出し残りをミキサーでクーリ(ピュレよりも粘度が高いもの)にしてアーティチョーク釉のお皿に流しています。

その上にスライスしたカベセロ、大和ルージュという赤いとうもろこし、塩漬けのすだち、生の金時草の若葉、レッドムーンというじゃがいもの澱粉チップ、花のように開いたアーティチョークをのせ、さらにその上にトリュフオイルを合わせて仕上げています。

これが今の私ができる自分なりの「総合芸術」です。
そしてこれを次のお店ではやれません。

なぜならこれが今の私の「100」だからです。経営において100は難しいです(私にとっては)。せめてこれを「80」と判断できるくらいまでに自身の総合力を上げないとレストランとして運営はできないと思っています。

なので来年から始めるレストランはこのようなものとはまた違う形のお店にします。
すでに形態や名称などは決めているのであとは場所だけです、、、「料理人の矜持 その9.5」でも書いたようにせっかくのご縁がある瀬戸でできればと思っていますが、、、まだまだ検討中です。

以上、ただの現況報告になってしまいましたが次回へ続きます。