「週一甘味処甘ぱんだ」は来月で1周年を迎えます。
もともとぱんだ家の定休日だった火曜日を「遊ばせておくのはもったいない」と思い始めた週一回の特別営業で、今もまだ瀬戸焼そばを求めて入店されるお客様をがっかりさせてしまいますが、「火曜日は甘ぱんだ」と知ってご来店される方々も徐々に増えてきて嬉しくありがたく思っています。
さて、2年目を迎える甘ぱんだでは、新たなメニュー「ボカディージョ」を始めます。
「ボカディージョ」とはスペインの国民食ともいわれるサンドイッチの一種で、一番シンプルなものはバゲットに生ハムを挟んだだけのものです(私がスペインで食べたのも大方それです)。それにチーズが入る場合もありますし、トルティージャというスペインの卵焼きが入る場合もあります。
甘ぱんだで始めるボカディージョは厳選した「バゲット」「生ハム」「チーズ」「ソース」の4つの素材を使います。数回にわたってそれぞれの素材の解説をしていきますのでご興味ある方はお付き合い下さい。
まずはバゲットから。写真は国産天然酵母「桐生酵母」と国産100%の小麦を使って作られたソフトバゲットです。「ボカディージョ」は本来バゲットを使いますが、どなたでも召し上がっていただきやすいようソフトバゲットを使うことにしました。
群馬県桐生市で作られるこのバゲットは私が兵庫県西宮市でレストランを経営していたときからお世話になっている製パン会社のもので、独自の天然酵母に群馬県広域で採れる小麦粉を合わせ、それに桐生の水、フランスブルターニュ地方の有名な天然塩「ゲランドの塩」を加えた生地から成ります。
その生地を「低温長時間熟成製法」にて通常の製パン工程の倍の時間をかけて低温でじっくり熟成させます。イーストが発達していない1950年代以前はフランスでもこのように自然の酵母を使い丸2日程かけてパン種を熟成させていたようです。
そして熟成を終えた生地を焼成し、瞬間冷凍します。パンの劣化は「水分の蒸発」と「デンプンのβ化」が原因です。焼きあがった瞬間から水分は蒸発し、デンプンの状態も変化していきます。それを全て解決するのが冷凍技術です。水は凍り、デンプンは-18℃以下でβ化が止まります。冷凍は食材自体の保存という効果が大きいですが、パンにおいては「美味しさを閉じ込める」ことが一番の目的と言って良いかもしれません。
拘って作られた美味しいパンの数々は、私のお店を助けてくれました。今度のメニューもこのバゲットがあればこそだと思っています。
次回は「生ハム」解説をします。