3皿目は「サルピコン」です。
サルピコンは魚介や野菜をダイス状にカットしてヴィネガーで和えたスペイン料理のひとつです。それを「ちらし寿司」に見立てて赤海老、紫烏賊、鰹菜、プラムトマト、ブラックオリーブ、低温で焼いた湯葉の角切りに、ボイルした二十三穀米を合わせた一皿にしました。仕上げにキャビアをのせ、ライムヴィネグレットを添えています。
ここでのポイントは海老と烏賊で、どちらも真空にして海老は53℃で30分、烏賊は58℃で1時間加熱しています。
オードブルとして自分の手から離れた状態で召し上がって頂くため、まず生ではご用意できなかった点、そして私が食材を扱う上で大事だと思っている「細菌とウイルス」、「タンパク質の変性」の2つを勘案した点、それらを考慮して上記の調理を選択しました。
海老を例にとると、扱う上で一番心配な細菌は腸炎ビブリオですが、これは中心温度約53℃3分弱の加熱で菌数が1/10に減少します。またタンパク質の変性においては60℃で表面のコラーゲンが溶け出してアスタキサンチン特有の赤色が呈色します。ただし今回使用した赤海老はその名の通り赤いのでコラーゲンと同時に旨味も溶け出す60℃まで上げずに筋繊維の変化が顕著になる50℃での調理を考え、最終的に53℃30分を選択しています。烏賊も同様です。
本来のサルピコンからはやや離れていますが、私が10年間自分のお店でやっていたことなので久々に楽しいレシピになりました。4皿目に続きます。