前回に続いてボカディージョの食材解説、今回は「生ハム」です。
「カンポドゥルセ社」はアラゴン州サラゴサに12600㎡の広さの工場をもつ生ハム加工会社です。最高クラスのオートマティズム技術が採用され、加工された生ハムは季節に合わせて自然の最適な温度をシミュレートした部屋で熟成され、適切な期間を経て出荷されます。
甘ぱんだのボカディージョにはそのカンポドゥルセ社の12か月熟成ハモンセラーノを使います。
ハモンセラーノの「ハモン」は豚の「後脚のハム」を指します。ちなみに前脚は「パレタ」といいます。「セラーノ」は「山の」という意味があり、ハモンセラーノと呼べるのは「最低7ヶ月以上熟成した白豚後脚」の生ハムです。DOP(原産地呼称保護制度)もあり、「テルエル」「トレベレス」はハモンセラーノの中でも別格の味わいがあります。
スペインは世界一の生ハム生産量を誇り、その数は年間約4500万本にもなりますが、そのうち約9割が「ハモンセラーノ(もしくはその基準から外れたハモンクラード)」で残り約1割が「ハモンイベリコ」です。
今回のボカディージョでは使いません(高価なため使えません)が、ハモンイベリコはその名の通り「イベリコ豚」の生ハムです。イベリコ豚はご存じの方も多いと思いますがイベリア半島固有のプーロ種(もしくはその交配種)と呼ばれる黒豚でどんぐりを食べて成長することが特徴的です。
しかしどんぐりを食べて育つ「本物のイベリコ豚」はスペインの全豚肉生産量の2%にもなりません。その最高級のイベリコ豚は「デ・ベジョータ(スペイン語で『どんぐり』の意)」と呼ばれます。「デ・ベジョータ」を名乗るにはまず100%純血であること、そしてデエサと呼ばれる樫の木の森でモンタネラ(放牧)し、60日以上かけて体重を1.5倍にしなければなりません。その厳格な飼育法を守ることで独特の香りと凝縮された旨味を持つ肉質が出来上がります。
それ以外の等級にはどんぐり以外に補完飼料を与えて育てる「デ・セボ・デ・カンポ」、飼料のみで育てる「デ・セボ」があります。日本のスーパーやチェーン店で見る「イベリコ豚」はほぼ「デ・セボ」ランクだと思って間違いありません。どんぐりも食べず交配により純血度合いも低い、もはやイベリコ豚とは「似て非なるもの」が「イベリコ豚」と認識されてしまうことは残念でなりません。
最後は話がやや逸れましたが、スペインで「生ハム」はとても身近なもので一昔前は給料が入れば一家に一本新しい生ハムを購入してたとか、、、国産の生ハムはもちろん、プロシュートやジャンボン・ド・バイヨンヌとも違う味わい深い生ハムを是非召し上がってみて下さい。