誕生日祝いの料理

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先日、自粛解除後初のPANDA coutureのご予約を頂きました。
お飲み物はなしでお一人様6000円のコース料理です。

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ご友人のお誕生日祝いということでデザートはホールケーキをご希望でしたので、料理のボリュームは少し減らしています。料理についてはお嫌いなものやアレルギーもなく、お任せということでしたので、私が作りたい料理をお作りしました。

今回は試作段階で料理写真を撮影をする時間がなかったため、お客様が当日撮影して下さった写真を使わせて頂きます。

まず、小さな前菜を3種類。うち2つは一緒にガラス大皿に盛りました。
グラスに入った料理は「トマト」です。ark.farmのトマトもそうですが、今のトマトは多雨のため幾分水っぽいです。そのためミキサーにかけたトマトを一晩漉してトマトウォーターを作り、さらにそれを冷凍庫に入れて一旦凍らせた後、水分と果汁の融解温度差を利用して濃縮した透明のトマト果汁を作っています。それをジュレと泡にして、乾燥トマトシートと一緒に提供し、トマトを存分に味わってもらいました。

もう一つの料理はark.farmの若採り四葉胡瓜にコウイカの薄切りを巻き付けて大葉のジェノベーゼ風を合わせたものです。マルドンの塩で味を引き締めています。

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3つ目の小さな前菜はツバスを夏みかんや柚子の果汁を使った濃いめのセビーチェ(ペルーやメキシコなどの魚介のマリネ)液に1分程つけたもので、下にはヤーコンとカリモリのアリニャーダ(スペインのスパイス入りピクルス)を敷いています。酸味を主体にした一皿ですが、これだけだと酸味だけになってしまうので間にモロヘイヤを挟んでいます。

続いて前菜は(大分アレンジした)ケークです。上の層は上ホルモン(牛の大腸)や生ハムを使ったパテ、下の層はモルシージャ(スペインの腸詰の一種で豚の血やお米が入っている)やトウモロコシ、米粉を使ったケークで、それらを人参のピュレで固めて繋ぎ合わせています。ホルモンは脂が非常に多いため、たっぷりのオリーブオイルで揚げ焼きにした後漉して、その脂はバターと合わせてケークに使用しています。

これは正に「甘ぱんだの賜物」です。今まで作ったことのなかった複雑なアントルメを作るようになり、そこからの発想でこの前菜を作るに至りました。

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魚料理は「スープも兼ねて」という点を踏まえて作りました。スープは野ぜりのピュレとフュメドポワソン(魚介のスープ)を1対1で混ぜ、そこに気仙沼産メカジキを低温のオリーブオイルで中心温度60℃までじっくり温めたものを合わせています。

上にはシャドークイーン(紫じゃがいも)のでんぷんを薄く焼いて60℃の油をくぐらせた「ガラス」をのせています。

肉料理は軽く煮込んだ仔牛のタンを焼き、ビガラード(オレンジのソース)、ビーツのピュレ、乾燥きのこの塩と合わせた一皿です。シンプルに焼いたタンを色々な味で召し上がって頂くように作りました。茄子、オクラ、イタドリも一緒に焼いています。

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デザートの前に先日のコースでもお出しした干し柿のメダイヨンを、料理からデザートへの橋渡しとしてご用意しました。
料理の合いの手でお出ししたバゲットは「aime le pain」さんのものです。どのパンも丁寧に作っておられてとても美味しく、瀬戸では一番のブーランジェリーだと思っています。

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最後のデザートは猿投の桃を使ったバースデーケーキです。3段のジェノワーズの間に桃のコンポートを挟み、シンプルに仕上げています。

良い誕生日になった、とお喜び頂けて嬉しかったです。

今回のコース料理は試作している最中に「甘ぱんだ」の影響を感じました。前菜が主たるものですが、それ以外の所でも要所要所で「製菓の意識」が働きました。その意識を一言で言うならば「調和」です。もちろん今までの料理でも調和を意識して作っていましたが、それとは違う角度で料理を俯瞰することができました。

甘ぱんだ始めてよかったなあ、としみじみ思ったPANDA coutureでした。