石川伸一氏の『「食べること」の進化史』を読了してから早4ヶ月経ってしまいました。「読書感想文でも書こうか」と思っている間に「甘ぱんだ」のオープンやホームページ作成など諸々重なって結局書けずじまい。
しかしやっと時間に多少の余裕ができたので、折角なら読書感想文としてだけではなく、食の備忘録兼考察という形で少しずつ書いていこうと思っています。
と、さらっと言いましたが私としては「大海原に漕ぎ出すつもり」で書きます。いつ終わるかわからない果てのない旅(大げさ)、ご興味ある方はどうぞお付き合い下さい。
さて冒頭に戻りますが、石川伸一氏は宮城大学食産業学部の准教授で私の知る限り「料理と科学」について公けに教鞭を執っていらっしゃる一人です。
前著「料理と科学のおいしい出会い〜分子調理学への誘い〜」は非常に理解しやすく、私は大変お世話になりました。
今回の『「食べること」の進化史』では過去から未来の食について「料理・身体・心・環境」と4つのテーマに分けて書かれています。
2年前に自身のお店を閉める際書いた『料理の右と左』という「なんちゃって卒業論文」では料理を「体・技・心」に分け過去から未来への展望を考察するということを行ったのであながち間違っていなかったなと勝手に自負しています。
さて、今回の著書においてのキーワードをひとつだけ挙げるとすれば、それは間違いなく『食のテーラーメイド化』だと私は思っています。
完璧なレシピを再現するロボットキッチン、宇宙でも活躍するであろう3Dフードプリンタ、脳が「味わう」感覚を解明するニューロガストロノミー、など科学の進歩により食は新しいステージへと突入しています。AIが厨房に常駐する日もきっと遠くありません。
「彼ら」は食べる側の全てをスキャンして、一人ひとりにあった料理を作り出すことができるようになるはずです。
その人が食べたいもの、また食べられるもの、その人に必要な栄養など、それぞれにあった「テーラーメイド食」をピンポイントで提供することができるでしょう。
その時、われわれ料理人はどうするか。
その答えを導くためにこの文章に「料理人の矜持」というタイトルをつけ、少しずつ考えていこうと思います。